日本石灰窒素工業会

国産石灰窒素の稲、小麦、野菜等への上手な使い方をアドバイス致します。

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みどりの食料システム戦略

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「国産石灰窒素」は「みどりの食料システム戦略」をサポートします。

近年、気候変動、生物多様性、SDGsをはじめとする環境への意識の高まりとともに、社会全体を持続可能なものにしていくことが求められています。
農林水産省は、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するため、「みどりの食料システム戦略」を策定しました。
この戦略では、将来の日本の農業のあるべき姿を見据えて、農林水産業に伴う輸入原料や化石燃料を使用した化学肥料の使用量、温室効果ガス排出量、化学農薬の使用量を減らすといった環境負荷の低減策を揚げています。

国産石灰窒素と「みどりの食料システム戦略」との関わり

2050年までに目指す姿 国産石灰窒素が関わることができること
[1] 輸入原料や化石燃料を使用した化学肥料の使用量を30%低減 輸入原料や化石燃料を使用した化学肥料の使用量の低減が可能
・国産原料(石灰石)と空気中の窒素が主原料
・化学肥料の使用低減が可能な「肥効調節型肥料」に認定
[2] 農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
(温室効果ガス排出削減)
(1)石灰窒素の稲わら腐熟促進により、水田からのメタンガス(CH4)発生を低減
(2)石灰窒素の施用により、茶園・畑地からの一酸化二窒素(N2O)の発生を低減
[3] 化学農薬の使用量(リスク換算)を50%低減
(総合的な病害虫管理体系の確立・普及)
「太陽熱・石灰窒素法」で、化学農薬の使用量の低減が可能

「グリーンな栽培体系への転換サポート」の交付金のご利用につきましては、市町村あるいは都道府県の「みどりの食料システム戦略」の担当窓口へお問い合わせください。

① 輸入原料や化石燃料を使用した化学肥料の使用量を低減

国産石灰窒素は国産原料を主原料とし、肥効調節型肥料に認定されています。

(1)国産石灰窒素の稲わら腐熟促進により、翌年の水稲基肥または追肥を減肥し、増収!

1)国産石灰窒素秋散布、秋すき込みで増収、基肥の窒素1㎏/10a減肥が可能

精玄米重

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石灰窒素 基 肥
対 照 区 無施用 標 準
石灰窒素区 20㎏施用 標 準
基肥減肥区 20㎏施用 N-1㎏/10a 減肥

実施機関:長野県農事試験場(現長野県農業試験場)
試験期間:1996 年〜1998 年(品種:コシヒカリ)
試験方法:石灰窒素 20 ㎏散布、稲わら全量秋すきこみ
試験結果: ●3年の平均収量で、対照区に比較し約 30kg/10a 増収しました。
      ●石灰窒素施用で、地力窒素供給力が高まり、施肥基準に対し、基肥窒素量1kg/10a の減肥が可能となりました。

出典:長野県農事試験場(現長野県農業試験場)試験成績 

(2)国産石灰窒素の作物残渣腐熟促進により、次作の野菜の基肥を減肥し、増収!

1)国産石灰窒素作物残渣すき込みで、基肥窒素を 20% 減肥が可能

残渣すき込み時の石灰窒素施用効果

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実施機関:島根県農業試験場(1999)
試験期間:1999 年(品種:キャベツ(グリーンボール))
試験方法:石灰窒素は残渣すき込み時に散布
 対照区    基肥 N14kg/10a、残渣なし
 残渣のみ区  基肥 N11.2kg/10a(N20% 減)、残渣のみすき込み
 石灰窒素10kg/10a区  基肥 N8.9kg/10a、窒素計10.9kg/10a
 石灰窒素20kg/10a区  基肥N6.6kg/10a、窒素計10.6kg/10a
試験結果:収量は、石灰窒素+残渣すきこみ区のいずれも、
     残渣のみ区に比較し20~30%増加しました。

出典:
長野県農事試験場(現長野県農業試験場)試験成績 土づくり肥料優良事例集 2020 土づくり肥料推進協議会編
露地野菜収穫残渣の利用技術(島根県農業試験場、1999年 研究トピック ときめき No189)
露地野菜収穫残渣のすき込みによる施肥量削減(島根県農業技術センター、環境部土壌環境科 安部聖)

② 温室効果ガス排出削減

(1)国産石灰窒素秋施用・稲わらすき込みで、水田から発生するメタンガスを低減!

1)国産石灰窒素を秋に施用して稲わらをすき込むことで、稲わらを腐熟促進し、翌年の水稲栽培期間中のメタン発生を約50%低減したという報告があります。

表 メタン発生量(単位:gCH4/㎡)

処理区 稲わら無し(持ち出し) 秋すき込み+石灰窒素 秋すき込み
6/11〜7/8 1.14 0.82 0.96
7/9〜8/11 1.09 1.46 3.00
8/12〜9/14 0.58 1.05 2.23
総 計 2.81(45) 3.33(53) 6.19(100)

出典:農耕地土壌からの温室効果ガスの排出抑制と作物生産 (福島県農業総合センター、三浦吉則、1992 年)

2)国産石灰窒素を秋に施用して翌春に稲わらをすき込むことで、稲わらを腐熟促進し、石灰窒素無施用と比べ、その年の水稲栽培期間中のメタン発生を約 30%低減したという報告があります。

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出典:前年秋の石灰窒素施用がメタン発生、水稲の生育に及ぼす影響、石灰窒素だより148 号(山形県農業総合研究センター、塩野宏之、2013 年)

(2)国産石灰窒素施用で、茶園や畑地から発生する一酸化二窒素ガスを低減!

一酸化二窒素(N2O)は、温室効果ガスの一種で、その温室効果が二酸化炭素(CO2)の約300 倍ともいわれています。畑地や茶園の土壌では、施肥された窒素から硝酸を経て一酸化二窒素が生成しますが、石灰窒素は、硝酸化成作用を示す菌①②だけでなく、一酸化窒素を生成する菌③の 働きを抑制することで、一酸化二窒素の生成を抑制するといわれています。また、茶園ではpHが低くなるほど一酸化二窒素の発生量が多くなることから、石灰窒素に含まれる石灰の酸度矯正効果により一酸化二窒素の発生が減少するとの報告もあります。

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図 茶園、畑地の一酸化二窒素発生の概略 ①亜硝酸酸化菌 ②硝酸酸化菌 ③脱窒細菌

出典:デンカ(株)、(独)農業環境技術研究所
①Akinori Yamamoto et al.Lime-nitrogen application affects n itrification, d enitrification, and N 2O emission i n an acidic tea soil Biology and Fertility of Soil 2014 50, 53-62
②Akinori Yamamoto et al.Lime-nitrogen application reduces N 2O emission from a vegetable field with imperfectly-drained sandy clay-loam soil Soil Science and Plant  Nutrition 2013 59 , 442-449
③Akinori Yamamoto et al.Effect of lime-nitrogen application on N 2O emission from an Andosol vegetable field.Soil Science and Plant N utrition 2012 5 8, 245-254

1)春肥および秋肥の窒素肥料の一部を国産石灰窒素で代替して施用すると、一酸化二窒素の発生が36%〜61%まで低減したという報告があります。

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図 茶園からの亜酸化窒素(一酸化二窒素)発生に及ぼす石灰窒素の影響

窒素肥料の一部を石灰窒素60 ㎏ /10aで代替すると、一酸化二窒素発生量は、慣行区の発生量100に対し石灰窒素区が36、慣行減肥区の発生量100に対し石灰窒素減肥区が61まで減少した。

出典:茶園からの亜酸化窒素発生量削減技術((独)野菜茶業研究所、徳田進一、2005年)

2)二番茶摘採後の深刈り更新後に、石灰窒素を畝間に施用し整せん枝残さをすき込むことで整せん枝残さの分解が促進され、一酸化二窒素の発生が35%低減したという報告があります。

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図 整せん枝の分解程度の推移

表 調査期間における一酸化二窒素の発生量(mg N /㎡)

試験区名 N2O 発生量 対照区比(%) 削減率(%)
対照区 1456 100 -
石灰窒素区 956 65 35

注1)調査期間:2013 年6 月〜12 月
注2)削減率:100−対照区比(%)

出典:茶の生産性の向上と環境への配慮を両立する 整せん枝残さ土壌還元技術マニュアル(独)農研機構 野菜茶業研究所(2015 年)
「みどりの食料システム戦略」技術カタログVer2.0 p73

【参考】J−クレジット制度適用

茶園における石灰窒素による一酸化二窒素の発生低減技術はJ−クレジット制度の方法論(メニュー)に入っていますので、この制度を活用することができます。

茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料 又は石灰窒素を含む複合肥料の施肥

削減方法 ●茶の栽培において、茶園に硝化抑制剤入りの化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料を施肥し、プロジェクト実施前の肥料施肥量を減らすことで、土壌からのN2O 排出量を削減する。
適用条件 ①プロジェクト実施前に施肥していた石灰窒素以外の窒素含有化学肥料又は有機肥料をジシアンジアミドが混合された化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料に代替すること。
②硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料を施肥する土壌で栽培する作物は茶であること。
③プロジェクト実施前後で、肥料の施肥方法、落葉・剪定枝の管理方法について変更がないこと。
④プロジェクト実施前に平均施肥量について1 年間以上のデータがあること。
ベースライン排出量の考え方 ●茶園において、硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料ではない、窒素含有化学肥料又は有機肥料を施肥する場合に想定される温室効果ガス排出量。
主なモニタリング項目 ●プロジェクト実施後に硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料を施肥する面積及び平均施肥量。
●プロジェクトで施肥した硝化抑制剤入り化学肥料中又は石灰窒素を含む複合肥料中の窒素量及びジシアンジアミド含有量。
●プロジェクト実施前に化学肥料を施肥していた面積及び平均施肥量。

※本技術は、みどりの食料システム戦略の技術カタログver2.0 に「一酸化二窒素の発生を抑制する茶園の土壌管理技術」として紹介されています。

【方法論のイメージ】

ベースライン

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プロジェクト実施後

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③ 化学農薬の使用量を低減

(1)「太陽熱・石灰窒素法」は、利用可能な全ての技術を組み合わせた耕種的防除法で、土づくりと土壌消毒ができます。

太陽熱・石灰窒素法

石灰窒素に、太陽熱、石灰窒素の有機物腐熟促進による発酵熱、湛水・密閉による土壌還元を組み合わせ、蒸し焼きの状態にして土壌病害虫を死滅させる防除方法です。センチュウ害はもちろん、トマトの萎凋病など難病害対策に有効です。

1)ハウスを利用した太陽熱・石灰窒素法

作業手順

  1. 土壌中に石灰窒素と稲わらや米ぬかなど有機物をすき込みます。
  2. 畝を立て、表面をマルチフィルムで覆い、畝間に湛水して、ハウスを密閉します。
  3. 地温を40〜70℃まで上昇させ、この期間を20〜30 日間(換算で40℃約100 時間)継続します。
  4. 夏季の高温期7〜8 月に実施するのが最適です。
図 ハウスでの太陽熱・石灰窒素法(概念図)
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① 稲わら、堆肥施用:10a 当たり1〜2t / 石灰窒素施用:10a 当たり100㎏
② 全面耕起後小畦立て、全面マルチ、湛水
③ ハウス密閉:7月下旬〜8月下旬

図 ハウス内での地温の日変化
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[太陽熱利用による地温上昇効果](’75.7.31)

表 太陽熱・石灰窒素法で効果が報告されている主な病害虫

トマト 萎凋病、褐色根腐れ病
ナス 半身萎凋病
レタス ビックベイン病(媒介するカビを防除)
ネギ 黒腐菌核病(苗床)
イチゴ 萎黄病
アブラナ科野菜
(キャベツ、ハクサイ、カブ、ブロッコリーなど)
根こぶ病、根くびれ病
ホウレンソウ 萎凋病、立枯病
キュウリ つる割れ病
各種作物 ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ

2)露地栽培における太陽熱・石灰窒素法

作業手順

  1. 夏場の炎天下に、石灰窒素と米ぬか等の有機物と、基肥に使う肥料も一緒に加えて耕起します。
  2. 十分に潅水し、透明フィルムでマルチします。
  3. 地温は地下10 ㎝で40℃以上まで上昇し、土壌消毒と土づくりができます。