(7)家畜ふん尿処理


Q7−2 家畜ふん尿に石灰窒素を添加すると、どんな効果がありますか?

A7−2 家畜ふん尿による悪臭やハエの発生に対する苦情はよく聞かれます。この対策に簡便な方法として石灰窒素の利用があります。家畜ふん尿の堆積時に使用したり、堆積した表面に散布すれば 1.ふんの悪臭がなくなる 2.ふんの乾燥が早く、除ふんや掃除がラクになる 3.石灰窒素の特性が加わり、ふんの肥効が高まる。その上4.ウジを死滅し、ハエの発生がなくなる、と云った有利な効果が望めます。
昭和45年制定の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」にもとづく厚生省令によれば市街化区域にふん尿を施用する場合、石灰窒素で処理するよう決められています。また、環境改善のため、石灰窒素の購入に助成をしている自治体や農協もあります。昔から、一握りの石灰窒素(約100g)を悪臭やウジの発生する場所に撒くことは、よく行われていました。
表7-2は、生ふん堆積の野積みでの試験では、石灰窒素を3〜4日ごとに材料の2%を散布、表面2〜3pより採取した堆肥1kg中の検出数です。

表7-1 官能検査による鶏ふん脱臭測定の事例(1:もっともよい⇔5:もっとも悪い)
表7-1 官能検査による鶏ふん脱臭測定の事例(1:もっともよい⇔5:もっとも悪い)
測定 : 電気化学工業(株)研究所

表7-2 石灰窒素散布の有無とウジ検出(匹数) (群馬県中之条普及センター)
表7-2 石灰窒素散布の有無とウジ検出(匹数) (群馬県中之条普及センター)
備考)6月8日設置、牛ふん堆肥の野積み

また、堆肥となる家畜ふん尿や下水汚泥には大腸菌やサルモネラ菌などの有害菌が存在することがあります。特に大腸菌類の多い牛ふんを堆肥化する場合、石灰窒素はシアナミド態窒素を含むアルカリ性肥料であるため、窒素補給と中和作用により発熱効果(55〜60℃3週間)が高く、有害菌を抑制するとされています。
表7-3は寒冷地の例ですが、石灰窒素を2%(堆肥1t当り20kg)施用すれば、堆肥の品温上昇がみられない場合(20〜65℃)でも、10日程度の堆積で大腸菌が減少することが報告されています。
このように、石灰窒素は完熟堆肥作りに有効であり、安全な農産物づくりにも役立つと考えています。

表7-3 牛ふんの堆肥化での石灰窒素による大腸菌殺菌効果 (長野県南信農業試験場)
表7-3 牛ふんの堆肥化での石灰窒素による大腸菌殺菌効果 (長野県南信農業試験場)