(6)作物別施用法 (野菜類)


Q6−4−1 石灰窒素はなぜ野菜類に効果が高いのでしょうか?

A6−4−1
1.緩効性で肥持ちがよい
野菜は比較的高温、多雨のもとで長期間にわたって栽培されるため硫安等の無機質窒素肥料は肥切れを起こしやすく、追肥が必要です。これは硝酸化成作用により早く硝酸イオンに変化し、硝酸イオンは土壌コロイドに吸着されないため、流亡しやすくなるためです。その点、石灰窒素は硝酸化成作用がゆっくりと進み、アンモニウムイオンとして長く留まります。そのため土壌からの流亡窒素量が少なく、土壌の硝酸イオンとアンモニウムイオンの割合を好適な条件で維持し、肥切れを防止できます。
図6-4-1黒ボク土壌における石灰窒素の窒素溶出量
(電気化学工業・石灰窒素だより134号)
図6-4-1黒ボク土壌における石灰窒素の窒素溶出量
(電気化学工業・石灰窒素だより134号)

2.土壌塩類の濃度が上がらない
石灰窒素は酸根をもたず硝酸化成が徐々に進むので、多肥しても土壌塩類濃度は上がりません。特に施設では塩類濃度が高くなり障害が起こりやすくなるので、必要な窒素肥料の中に石灰窒素を入れておくことで、この障害を少なくすることができます。

図6-4-2 窒素質肥料の種類による土壌pHおよびECの変化(柳井利夫・農及園1976年10月)
(窒素として60r/100g乾土、25℃)
図6-4-2 窒素質肥料の種類による土壌pHおよびECの変化(柳井利夫・農及園1976年10月)

3.石灰(アルカリ分)を多量に含んでいる
野菜は土壌反応が微酸性〜中性(pH6.5〜7.0)を好みます。
酸根をもつ肥料を多量に使用したり、また硝酸化成の早い窒素質肥料は石灰と結びついて硝酸石灰となり、雨が降ると石灰を流してしまうので、土壌の酸性は徐々に進みます。これを防ぐには毎年、石灰質資材を100〜200kg/10a程度も入れなければならないと云われています。
また、石灰は野菜の栄養としても重要で吸収量が多く、種類によっては窒素と同じくらい吸収されます。石灰窒素には約60%の石灰が含まれており、土壌反応の矯正や、石灰養分としても高い効果があります。

4.品質向上効果がある
石灰窒素は土壌病害虫、連作障害、雑草を防除する農薬効果もあります。この効果は収量の低下を防ぐだけでなく、品質向上にもよい影響があります。