(5)有機物分解促進効果


Q5−13 作物残渣のすき込みに石灰窒素を使うと、どのような効果がありますか?

A5−13 効果としては次のことが特にあげられます。
1.作物残渣の土中での腐熟を促進し、土中堆肥化ができる。
2.腐熟により土壌微生物相が改善され、土壌病害の発生しにくい土壌環境ができる。
3.残渣の腐熟で生じる有機酸を中和し有用微生物の増殖を助ける。
4.施肥量の節減ができる。
土中堆肥は、稲わらや麦稈などを地上で堆肥化するかわりに、土中に埋めて腐熟させ堆肥化したものです。最近では野菜畑や果樹園でも実行されています。しかし、有機物のみを多施用したり、あるいは未熟有機物を使用すると生育阻害が発生する場合があります。このため、よく腐熟させる必要があり、それには石灰窒素の散布が好適です。
作物の種類、すき込み量などで異なりますが、一般に石灰窒素施用量が20〜80kg/10aが目安でさらに効果をのぞむときは増量して100〜120kg/10a使用の事例もあります。
【福島県の事例】−夏秋キュウリ・トマト栽培
夏秋キュウリやトマト栽培に定植の2〜3ヵ月前 畦下に溝を深く掘り2,500kg/10aの稲わらを深層と中層の2段に敷き込み石灰窒素100kgのほか鶏ふん、油かす、ようりん、苦土石灰を施し土と混合して覆土する。
【高知県の事例】−ハウス促成キュウリ栽培
ハウスの促成キュウリ栽培で、定植1ヵ月前に稲わら1,000〜2,500kg/10aと石灰窒素50〜80kgを、他の肥料(複合肥料、油かすなど)と一緒に全面散布混合し土づくりと施肥を一度におこなっています。

【島根県農試の事例】−キャベツ栽培
露地野菜の収穫残渣処理は病害虫を考慮すれば圃場外に持ち出すことが推奨されていますが、負担が多く煩雑であり、実態として土壌にすき込まれる場合が多いのが現状です。
一方、すき込まれる残渣に含まれる窒素量は0.5〜1.0kg/aとみられます。これは基肥の20〜40%に相当することから、残渣の分解を速やかにおこない養分の有効化を促進することによって施肥量の節減が可能か検討しました。キャベツ収穫残渣に種々の分解促進材を施用してすき込み、基肥を20%減肥して栽培した結果、石灰窒素を施用した区の収量は施肥量を減らしたにもかかわらず浅渣のみをすき込んだ区に比べ大きく上回りました。

下表は長野県農試でのキャベツ残渣すき込み時効果試験です。
表 5-11 跡作キャベツに対するキャベツ残渣すき込み時の分解促進材施用効果 (長野県農試 1999年)

区    分

収 量 (kg/a)

残渣のみ
石灰窒素 (1kg/a)
石灰窒素 (2kg/a)
微生物資材 (A)
微生物資材 (B)

231
328
347
261
287

100
142
150
113
124