(5)有機物分解促進効果


Q5−1 石灰窒素は稲わらなど有機物の腐熟を早める効果があると聞きますが、その理由を教えて下さい。

A5−1 有機物の分解は有機物中の炭素と窒素の割合である炭素率(C/N)によって左右され、炭素率が30以下になると微生物の増殖が早くなり腐熟化が進みます。これに対し炭素率が40以上では微生物のエサの栄養源である窒素が不足し、微生物が増殖せずに分解が遅れることになります。例えば稲わら堆肥の場合には、稲わらの炭素率はおよそ70であり、窒素を添加して炭素率を30前後にするには稲わら500kgに対し約4kgの窒素が必要になります。石灰窒素の窒素成分は20%ですので、20kg(1袋)を散布することになります。

石灰窒素は他の資材、肥料に比べ以下の理由により有機物の分解を早めます。
1. 石灰窒素には石灰が60%含まれ微生物活性に最適な微酸性〜中性の条件を維持します。
2. 石灰窒素に含まれる石灰はわら類等の粗大有機物中の繊維をほぐす作用があります。
3. 石灰窒素の主成分シアナミドは尿素を経てアンモニア態窒素として存在し硝酸化成作用が遅れるため長期間にわたって窒素供給が継続します。

以上により石灰窒素を用いて堆肥化を図ると、堆積後の発酵が進み温度の上昇が早い、堆積期間が短く済む、原料の稲わら中の窒素や添加した窒素の損失が少ない等の利点をあげることができます。
表5-1は大麦稈に石灰窒素を添加し、堆積した後の堆肥成分を硫安と比較したものです。

表5-1 石灰窒素堆肥の品質(原料大麦稈225kg堆積後51日目に分析) (農林省農試)
表5-1 石灰窒素堆肥の品質(原料大麦稈225kg堆積後51日目に分析) (農林省農試)
石灰窒素堆肥の成分は、特に窒素、加里含量が多く、腐熟度も高い。