(4)太陽熱・石灰窒素法

トマト、ナスなどの青枯病菌、半身萎凋病菌のバーチシリウム病菌やトマトなどの委凋病のフザリウム菌など、多くの難病土壌病原菌は30cm以上の深さまで生息しており、これらの防除には地温40℃を一定期間得ることが必要です。
図4-1土壌病害虫の垂直分布図
図4-1土壌病害虫の垂直分布図

図4-1土壌病害虫の垂直分布図

Q4−1 ハウス栽培で「太陽熱・石灰窒素法」による土壌消毒とは、具体的にどうするのでしようか?

A4−1 この方法は夏季の太陽熱による地温上昇(熱効果)と石灰窒素による堆肥化(腐熟促進効果)および発酵熱による地温上昇(熱効果)を効果的に利用した物理的な防除法であり、一般的に「太陽熱・石灰窒素法」と呼ばれています。まず、土壌中に石灰窒素と有機物をすき込み表面をマルチしハウスを密閉すると地温が40〜50℃まで上昇します。この期間を20〜30日間(積算で40℃約100時間)継続すると各種病害虫と雑草を防除でき、同時に土壌の理化学性が改善され、総合的な土づくりができます。詳しい方法は次のとおりです。

1.実施時期
日射が強い時期が最適です。通常は梅雨明けがよいですが、日射量が多ければ、他の時期でもかまいません。処理期間は20〜30日間が必要です。地温の上がり方が足りない場合は、期間を長くして下さい。

2.作業の順序(標準)
1.稲わら散布:切りわら1〜2t/10aを散布する。わらの上に軽く散水する。
2.石灰窒素散布:わらの上に石灰窒素を100kg/10a散布する。
3.わらをすき込む:トラクター耕うん機で、わらをなるべく深くすき込む。
4.小畦を立てる:小畦(高さ30p幅60〜70p)を立てる。
5.透明ビニールフィルムで完全マルチ:古ビニールフィルムで土の表面を密封する。
6.畦間に一時湛水:土壌を急速に還元化するためにビニールフィルムと土の間の畦間に水を張る(図4−2)。水漏れの多いところではもう一度水を張る(ただし湛水はつづけない)。
7.ハウス密閉:ハウスの破損箇所は修理し、出入口や潅水溝からすきま風が入らないように完全密閉し20〜30日放置する。

3.有機物の種類と量
有機物は稲わらのように窒素の含有率が低く発酵熱を発生するものが効果が高いので代替品を使用するときにも発酵熱を出すものを選ぶようにします。鶏ふん、豚ぷんを使うときは窒素が多くならないように注意します。10a当たりの施用量の目安は次のとおりです。
稲わらがない場合は、籾殻0.5〜1t、飼料作物〔青刈〕生草5〜7t、バーク〔一次発酵品〕4〜5t、おがくず〔生〕1.5t、きゅう肥〔豚ぷん〕0.5〜1t、〔生ふん〕1〜2tを使えます。地温は稲わらと石灰窒素を使うと、これらを使わない場合より高くなり、特に冷夏で地温が上がりにくい年には効果的です。

図4-2 太陽熱・石灰窒素法の略図
図4-2 太陽熱・石灰窒素法の略図
図4-2 ハウス内地温の日変化(奈良県農試・1975.7.31)
図4-3 ハウス内地温の日変化
(奈良県農試・1975.7.31)

表4-1 処理区間地温40℃以上の時間および日数(高知県農業技術課)
表4-1 処理区間地温40℃以上の時間および日数(高知県農業技術課)
注)測定位置は地下25p

表4-2 太陽熱・石灰窒素法によるセンチュウ防除結果
(京都府木津農業改良普及センター 昭和51年)
表4-2 太陽熱・石灰窒素法によるセンチュウ防除結果(京都府木津農業改良普及センター 昭和51年)
(数字は匹数)

表4-3 病原菌の死滅温度(℃)と時間の関係 (電力研)
○ : 生存    ● : 死滅(恒温水槽による処理)
表4-3 病原菌の死滅温度(℃)と時間の関係(電力研)