(2)肥料効果


Q2−2 肥料としてどんな特長がありますか?また、その理由は?

A2−2
1.石灰窒素由来のアンモニアは土壌コロイドとの吸着力が強い。
石灰窒素から生じるアンモニアは炭酸や重炭酸と結びついた炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムの形になっています。化学肥料の中のアンモニア態窒素は、いろいろな酸と結びついています。例えば、硫酸と結びついたのが硫安、塩酸は塩安、硝酸は硝安、燐酸は燐安などです。
ここで注目して頂きたいのは表2-2に示したとおり、根酸の種類によってアンモニアが土壌コロイドに吸着される強さが異なってくることです。強酸と結びついたアンモニアの吸着力は弱く、弱酸では強くなります。炭酸、重炭酸は弱酸ですから石灰窒素からのアンモニアは土壌コロイドによく吸着され、他の強酸と結びついた肥料に比べ土壌コロイドから離れづらくなっています。

表2-2 各種アンモニウム塩類の土壌への吸着力の比較(農林省蚕糸試・潮田)
表2-2 各種アンモニウム塩類の土壌への吸着力の比較(農林省蚕糸試・潮田)

2.石灰窒素はIB、CDU、ウレアホルムなどと同様に化学合成緩効性窒素肥料の分類に入りますが、加水分解でジシアンアミドなど硝酸化成抑制成分を生成し、アンモニア態窒素を緩やかに硝酸態窒素に変えることで、緩効的な肥効を示すのが特徴です。
図2−2に石灰窒素、化学合成緩効肥料A、被覆肥料Bについて20℃の条件で黒ボク土における硝酸態窒素生成量を示しました。石灰窒素は他の肥料に比べ硝酸態窒素の生成が遅く、約100日で80%の硝化率になっております。地温等により異なりますが、石灰窒素は被覆肥料の70〜100日タイプと同程度の肥効が期待されます。
次に小麦栽培期間中のアンモニア態窒素の残存量の推移を示したものが図2−3です。硫安に比べ黒ボク土、灰色低地土ともに石灰窒素はアンモニア態窒素の残存量が多く、その分硝酸化成作用が遅れていることを示しています。
アンモニア態窒素はプラスイオンで、土壌コロイドはマイナスのため土の粒子に吸着されますが、硝酸態窒素はマイナスイオンで、未利用の硝酸態窒素は降雨等により地下に流出し、無駄になります。
以上のように石灰窒素は肥効の持続期間が長く、窒素の流亡が少なく環境に優しい肥料と云えます。農林水産省は「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律施行規則」に定める肥効調節型肥料施用技術として施用できる普通肥料を認定しており、新たに平成25年10月に石灰窒素を「肥効調節型肥料」とする改正が行われました。

図2-2 黒ボク土における硝酸態窒素の生成割合(%) 日本肥糧検定協会1997年
図2-2 黒ボク土における硝酸態窒素の生成割合(%) 日本肥糧検定協会1997年

図2-3 小麦栽培期間中のアンモニア態窒素残存量
                (三重県科学技術振興センター2006年:石灰窒素だより144号)
図2-3 小麦栽培期間中のアンモニア態窒素残存量

3.土壌中の有機態窒素の無機化を促進させます。
堆肥や有機質肥料の中には窒素の無機化が遅く、無機化率が低いため期待された肥効が得られないことがあります。
石灰窒素の無機化促進効果を調べるため、牛ふん堆肥に石灰窒素と尿素、なたね油かすに石灰窒素を土壌に添加し、30℃の条件下で牛ふん堆肥は8週間後、なたね油かすは4週間後の窒素の無機化量をみた試験が図2−4です。無添加及び尿素添加に比べ牛ふん堆肥、なたね油かすともに、石灰窒素の添加により無機化窒素量が明らかに増加しています。その理由として石灰によるアルカリ効果及びシアナミドによる「部分的殺菌効果」が考えられます。
以上のように、石灰窒素は他の肥料に比べ堆肥等の有機物と併用することにより、有機物中の窒素の肥効を引き出す効果があり、窒素の供給力が高まりまります。

図2−4 石灰窒素添加の有無による有機物の窒素無機化率 (電気化学工業)
図2−4 石灰窒素添加の有無による有機物の窒素無機化率 (電気化学工業)